前回の記事でお伝えしましたように2018年にフランスの日本酒コンクールKURA MASTERに於いてプレジデント賞を頂き授賞式やイベントの参加でパリに1週間滞在しました。
1週間のパリでの生活。私のパリのイメージは「食の都」でもありますが「芸術の都」。数多くのトップブランドがあるイメージですしフランスのお酒と言えば「シャンパン」「ブルゴーニュ」「ボルドー」。
お酒そのものがしっかりブランド化されており日本酒にはないブランド力があると感じていました。
日本酒もワインと同じ醸造酒でありながらこの差があまりにも大きく感じました。この差は何なのか?
予定も色々ありましたが、せっかくパリに来たのだから美的感覚を磨き色々学んで帰りたいと思っていました。
朝散歩やジョギングをしてパリの街並みの空気を楽しむ事から始めました。また美的感覚を磨く為に私はブランド品には興味がありませんがパリと言えば「ルイ・ヴィトン」「CHANEL」「グッチ」「Dior」など有名なブランドが沢山あります。せっかくの機会なのでウィンドウショッピングも楽しみました。
その中でも「Dior」の建物は衝撃的でした。
目に映るもの全てがカッコよく見えました。
実はこの時期、私には1つのモヤモヤした悩みがありました。
「ちえびじん」ブランド立ち上げ当初「パック酒」の中野酒造のイメージを変えるには原料や中身だけではなくボトルやラベルにもこだわりたいと思っていました。
その為3年目から横文字で平仮名「ちえびじん」にしてからは瓶の色を昔から使用している茶瓶は使用せず原価は上がりますが全て黒瓶を使用する事で少しは高級感が出ると思いました。
その為、黒瓶に合うラベルを作り「ちえびじん」のイメージをカッコよくしたいとの想いがありました。
又表ラベルに「箔」というキラキラを使用する事で少しは高級感が出ると思い積極的に使用する事にしました。
※余談ですが今期の新酒からは全ての商品が「箔」使用に変更になります。
私の中のモヤモヤの原因は「裏ラベル」にありました。
当時「ちえびじん」の「裏ラベル」は蔵で手作りして、コピー機で作成しておりました。
その為すごく簡易な物で、商品名やアルコール度数など必要最低限が書いてある程度のものでした。
自分でも「裏ラベル冴えないな~」と思っていました。もちろん表から見える訳ではなく、食品の「裏ラベル」などを見てもそうですが「裏ラベル」にそこまでこだわる必要はないと言えばないかもしれません。しかし普段見えない「裏ラベル」こそこだわりたいな~と思ってはいましたが・・・。
想いが強すぎて何もアイデアが浮かびませんでした。
今回のフランスの旅で「裏ラベル」を変えるヒントが得られないかと思っていました。
話は戻りますがウインドウショッピングも終盤で疲れが溜まり始めた頃にある店に立ち寄りました。
そこで私の目に飛び込んできたものは。
ガラス張りの中にあるこのハイヒール。
「かっこいい~」疲れが吹き飛びました。
もちろんパリの店でガラス張りの中に煌びやかに飾られた特別な空間が私の頭を麻痺させたのかもしれません。
しかし数々のブランドショップを回る中で一番の衝撃を受けました。
表が黒に対し普段見えない(見えにくい)裏が赤。
表よりも目立つ裏。
これだ!「ちえびじん」の裏ラベルも赤にしよう!(笑)
パリのクリスチャンルブタンの店で即決しました(笑)
ちなみに私は「クリスチャンルブタン」と言うブランドも、このハイヒールの存在(レッドソール)も全く知りませんでした。知らなかったからこそ衝撃も大きかったのでしょう。
フランスから帰って直ぐに実行した事は「裏ラベル」デザインの作成です。
ただ単に「裏ラベル」を赤にするだけではなく、日本酒業界は「日本酒度」や「酸度」など細かい分析値を伝える事が多いですが私はあえて細かい分析値は入れずに裏ラベルに「誕生エピソード」を入れる事にしました。
何故この商品を造ろうと思ったのか?一つ一つ商品は違えどわが子のように育てリリースした商品にはその商品が生まれた「誕生エピソード」があります。
フランスのシャンパンやワインを頂く際には原料のみならず造り手やその背景にあるエピソードも一緒に聞かせて頂く事も多く「ちえびじん」ももっと多くの人にその商品が生まれたエピソードを発信して行きたいと思いました。
昨今一人でも日本酒が楽しめる魅力ある飲食店も増えて参りました。私も皆で楽しむ日本酒も好きですが飲食店様で一人で楽しむ日本酒が大好きです。お一人で飲食店に訪問した際にお店の方と会話しながら日本酒を楽しむのも良いですが「ちえびじん」は表ラベルを見ながらではなく裏ラベルの誕生秘話を読みながらお酒を楽しんで頂ければ嬉しいです。